講演会#6 レクチャーレポート

2018年6月16日(土)、6回目となるアーキバウのレクチャーが開催されました。

今回はレクチャーの様子をレポートしていきます!

今回のゲストは、都市環境システム学科の柘植研究室OGである、玉麻屋(http://www.tamaya-inc.com/)の中塚麻子さんをお招きさせていただきました!

はじめにレクチャーの様子から!大勢(過去最多?)の学生が参加してくださいました!ありがとうございます!

さて、建築、都市環の両学科に関心をもっていただけるようなテーマを予め用意してくださった中塚さん。大変ありがたいです!早速見ていきましょう!

まずはご自身の生い立ちの話から。

大阪出身の中塚さん、高校時代に建築に興味が湧き、美大の建築学科を目指すことに。

多摩美術大学へ進学するも、デザインを中心に学んできましたが、千葉大学との合同スタジオで

「他者に意図を伝えること」の重要性に気づき、理論的な思考を学ぶために千葉大学大学院に進学されます。

何が今の自分に足りなくて、それを補うには何をどうしたらいいか、きちんと考えられている中塚さんはとても素敵で、ぜひ見習いたいですね!

千葉大学大学院卒業後は、デベロッパーへ就職し、再開発の業務に携わります。

あることをきっかけに、5年で転職を決心しますが、選択を迫られます。

その選択とは、大好きな再開発の業務を選び会社に残るか、日本橋で働くことを選ぶか、ということ。

再開発の業務を通じて知った日本橋の魅力に惹かれ、最終的には、日本橋で働くことを選択します。

中塚さんは、日本橋の会社に就職し、その傍ら、日本橋でボランティアなどを続け、地元の方と親密になっていったそうです。

そこから「やはり好きな仕事で生きて行きたい」と思ったとき、多くの人の助けや縁あって独立し現在の玉麻屋さんを起こしたのだそう。

独立の時に役立つアルバイトや、偶然の出会いが独立の契機になったことなど、学生にとっては聞き逃せないお話が多く、皆さん聞き入っています。

ここまで共通しているのは、常に今の自分が大事にするもの、優先するものをきちんと把握しているということですね。ありていに言えば、自分を客観視する能力がすごいですね。

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さて、ここからは中塚さんの今のお仕事についてです!

一つ目に、まちづくりに関わる様々な方との会話を重ねながら、合意形成を目指すコーディネイターとしての仕事について話してくださいました。

 

まちづくりは、様々な立場、多くの人と進めるものなので、人間関係も複雑になり、トラブルが起きてしまうのは良くあることらしいです。

 

それに対して中塚さんは「実際トラブルのほとんどの原因は、十分に話ができていないからなんです。それぞれの立場の要求を、自分たち側からの言語でそのままぶつけても、なかなか通じないんですよね。」
なるほど、世代が違うとで理解できなことがあると言いますが、業界や立場が違っても同じように、お互い理解できないことってあるんですね。

「コーディネートするには、立場も業界も世代も違う人たちの要求を、どちらもよく理解をしていないといけないんです。なので、日本橋でボランティアをしたり、お祭りに参加したことや、不動産会社で働いた経験、転職した経験など、いわゆる回り道をしてきたことがなかったら、私はこの仕事できてないんです。」

この他にも、打ち合わせや訪問時には相手にリマインドをかけることや、たった5分話すためにでもその人に会いに行くということの小さなことの積み重ねが、信頼関係の情勢に繋がるということを教えていただけました。

人との出会い一つ一つや、前の会社であったり、とにかく出会いや縁というものを大切にされていて、それに対しとても感謝をしている方でした。そして人と接すること、まちの人のことがとても好きなんだということがひしひしと伝わってくる語り口でしたね。

 

続いては地元主体でのデザインコード作りの話に。

地元側から美しいまちを作っていくための方針をつくり、まちの人全員でまちを作っていく意識というのは重要ですよね。

実例を見せつつ、苦労話をしてくださる中塚さん。

「今まで都市やまちづくりといったものに目を向けたことのないであろう人を、都市に目を向けさせることは本当に大変で、『この通りをもっと良くしていくにはどうすれば良いと思いますか?』と地道に何回もヒヤリングしました。」

「会議に来てもらうことにも努力が必要で、毎回の会議をいかに楽しいものにするか考えました。楽しくないとすぐに来てくれなくなってしまうので。また、○○協議会みたいな名前ではなく、会議の名前をみんなで決めるところからやりました。」

まちの人の意見を丁寧にくみあげて、それをカテゴリごとに分類してイラストに見える化する。

文章で見れば簡単そうですが、まちの人に伺ってもなかなか意見を出ないものだそうで、とても苦労が伺えました。まちのひとがあたりまえのように会議に参加してくださるとは限らないこと、当然といえば当然なのですが、言われるまで学生の私は正直気づかなかったです。

 

さて実例としては最後になります、島婚のお話です。

島のご友人からの依頼ではじまったというこのお仕事。

島婚とは島の男性と、島外の”島好き”な女性との婚活パーティのようなものだそうです。

年一回で数年続いているこのイベント、実は一年に一組は結婚し、島で新しい家庭を築かれているのだそう!すごい効果ですね!

 

まちづくりや島婚など、中塚さんのお仕事に共通しているのは、地域の人が地元を大切にする、それを手伝うことが中塚さんの仕事だということですね。

「大切なのは、地元の人が極力自分たちでやろうとする姿勢なんです。いっしょにやるべきことを整理して、地元より、外の人間がやったほうがスムーズなことをわたしが引き受けてやるというスタイルをとっています。地元が責任を持って未来のまちのために継続的に取り組んでいくという意識があれば、きっとうまくいきます。そうでないときは、他人任せになってしまい、地元の魅力が形にならず、うまくいかないことがほとんどなんです。」

それを聞いて、地元の人あっての中塚さんであるし、中塚さんあっての地元の人なのだと、そしてその間にある信頼関係はとても美しく見えました。

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最後に、中塚さんの持っている、この先のビジョンについて語ってくださいました。

今、中塚さんが大切にしていることは、自分が今この社会において、世の中においてどこに立っているのかや自分が何をすべきなのか、何をやりたいのか、を知ること。

天狗にならないように、怒ってくれる人を周りにおいておくことや、できないことに挑戦すること、わからなくても理解し続けようとすること、これが本当に大切とくり返しおっしゃっていました。

 

建築や学ぶ学生からすると、とても新鮮で興味のあるご職業でしたが、それ以上に中塚さんの生き方や考え方にとても感銘を受けることが多かったです。

質疑も多く、濃密な1時間半だったのではないのでしょうか!

最後は中塚さんを含め、皆さんで記念撮影です!

 

最後までお読みいただきありがとうございました!

今回のレクチャーレポートは建築学科4年の森本が務めさせていただきました。

次回のレクチャーシリーズもお楽しみください!