講演会#9 レクチャーレポート 山中 佑太氏

2019年11月2日(土)、9回目となるアーキバウのレクチャーが開催されました。

 

今回のポスターのキャッチコピーは「地元で働くステップアップ法聞きたくない?」という、今までのARCHIBAUレクチャーとは少し異なるアプローチ。語り手は今回のために広島からお越しいただいた荒谷建設コンサルタント/一般社団法人地域共創センター理事 山中佑太氏。

 

山中さんから見せていただいたスライド1枚目のタイトルは「自分自身のキャリアを無計画にデザインする」

さて、どんな話が繰り広げられたのか。

早速見ていきましょう!

 

 

まずは山中さんの経歴紹介から。

1985年生まれで、早稲田大学の社会科学部卒業後、2009年にNTT都市開発ビル事業本部へ入社。東京田町にある約6,000人が入居するオフィス運営に従事したことからキャリアがスタートします。ビルの屋上や、空室を利用してテレビドラマなどのロケに活用してもらう事業にも携わっており、色々な芸能人が来るビルとして入居しているワーカーに喜ばれたんだそう。

 

2年ほど経った2011年に、東日本大震災が起きました。社会人になった時から「35歳までに地元広島に帰って、まちづくりに携わりたいと思っていた」と、山中氏。未曾有の大災害を身近に感じ、会社を飛び出して、新たなキャリアに踏み出そうと決心に至ったようです。

 

2012年からは岐阜県多治見にあるまちづくり会社を、ハローワークで見つけ、そこで働くことに。当時の仕事は、商店街の空き店舗となっているところを、借りたいテナントとマッチングさせる事や、商店街でマルシェをするなど、ストリートに賑わいを生み出す仕事に従事。

 

2014年には豊島区役所の都市計画課で、池袋駅東口の目抜き通りである「グリーン大通り」でも社会実験の仕掛け人として活躍。1年目にはオープンカフェ、2年目にはマーケットの出店と着実に拡大をして行ったわけですが、その裏で山中さんは都市計画課の立場として、グリーン大通り沿道の100にもわたるビルオーナーなどの関係者に協力依頼をして回ったとのこと。

 

 

グリーン大通り等における賑わい創出プロジェクト実施者募集要領から引用(豊島区)

https://www.city.toshima.lg.jp/303/documents/documents/170216youryou.pdf

 

なぜ、そのような取り組みを?と司会が尋ねると、「各ビルオーナーに短期的には、オープンストリートの社会実験に協力をしてもらいたい。そしていずれは、エリアマネジメント組織のメンバーになってもらい、更には、民間主体、民間発意のまちづくりを実現したいからです」と山中氏。

 

2015年プライベート面ではご結婚をされたという契機になった年。同年、仕事面では採用セミナーで採用担当と意気投合したことがきっかけで、リビタに転職。石川県は金沢に誕生したホテルHATCHiの1階ラウンジスペースを地域に開かれた場所にしようと奔走。コンテンツ開発担当として、地元の雑貨屋さんに商品を置いてもらうように話をしたり、ラウンジスペースをイベントに使ってもらうように大変な苦労をして働きかけをしたようです。

HATCHi HPから引用

 

さて、30歳を機に、当初予定した35歳より早い予定で、地元広島に帰る決心をした山中さん。奥様は東京出身ですが、地元に帰る山中さんを後押ししてくれたそう。

そして、現職の荒谷建設コンサルタントに都市プランナーとして入社されました。

1年間は都市マスタープランを作ったり、市民アンケートを作成・収集したりと建設コンサルタントの本来業務で仕事をされた後、今後の業務拡大の領域として、エリアマネジメントに関わる勉強会の事務局を現在担っています。

 

広島の第2都市と言える「福山駅」周辺で、豊島区でのオープンカフェ社会実験の経験を生かし、OPEN STREET FUKUYAMAを開催。ここでは商工会議所が起点となり、社会実験の開催に至りました。

 

「どうやって、色々な人を巻き込んでいるのか?」と訪ねると、山中さんはこう語ります。

 

「私がまちづくりの一環として巻き込もうとしている人達は色々な立場や利害があるんです。それを理解しながら、どの点であれば、協力を得られるか、相手の気持ちになって考えていますね。今までビルの運営から始まり、まちづくり会社などの民間企業、また、行政を経験したことが、様々な立場のことを寄り添って考えられるというアピールにもなっていると思います。相手に合わせて知恵を使い、行動して何度もアプローチをするってことも大切ですね」

 

改めて過去を振り返り、山中さんがいうのは、「35歳になったら広島に帰ろうという気持ちがあったが、そこまでの道のりは決して計画的なものではなかった」ということ。「ただし、自分が納得いくように、転機となるタイミングでは、自分が何を優先して何を劣後させるのか、表として可視化して、都度比較評価をし、納得いくような道を選択してきた」、「いろんなことが繋がっていて、今でも以前出会った人と仕事をしていたりする」と。

会場では実際に山中さんが転職活動のときに作っていた自己分析用のエクセルシートの一部を見せていただき、学生はおどろきと興味の視線を注いでいました。

 

学生からの質問には、

「複数の転職は、マイナスイメージをもたらすのではないのか?」という質問が出ました。山中さん曰く「基本的には、履歴書と職務経歴書を送るのだけど、自分はそれに加えて、どういう思いで、なぜ転職したのかという理由書を作成して送っていた。ネガティブな転職ではなく、ポジティブで意図的な転職であるという風にちゃんと伝えれば、マイナスになることはないし、むしろステップアップになる」と。学生にとっては、なかなか普段聞けない話だと思います。

 

今回のARCHIBAUでは、初めて、地方の政令指定都市で活躍されている並びに官と民の領域を経験した講師をお招きしました。終わった後学生に話を聞いたところ、行政も、民間企業も経験された方から話を聞く機会は滅多にないため、非常にためになったとのこと。また、講師と距離が近かったので、色々と質問もできてよかったと話していましたね。

 

最後に、プチ情報ですが、聞きにきた学生の中にも2人は広島出身がいるという、なんとも広島愛に溢れた会になりました。

 

次回も楽しみですね!以上、OB事務局岡本がお届けしました。