講演会#8 レクチャーレポート

2019年6月15日(土)、8回目のアーキバウのレクチャーが開催されました。

今回は2人のゲストに講師として登壇していただきました!

 

一人目のゲストは、建築学科OBである、株式会社リビタの浅川大輔さんです。

では早速見ていきましょう!

最初に学生時代や就職先の考え方についてお話ししていただきました。

もともと建築というよりプロダクトデザインに興味があった浅川さん。しかしやっていく内に設計が楽しくなり、設計課題では毎回講評会に選ばれるほど優秀だったそうです。

4年生からは設計の研究室に所属したのですが、そこで自分が設計のディティールにこだわるより企画、コンセプトを生み出すことが好きだという気づきを得たとのこと。

就職先の決め方としては、①不動産業、②リノベーションを行っているところ、③小企業であること(自分の裁量が大きいから)の三つの条件を重要視されました。そこで株式会社リビタを選ばれたそうです。

浅川さんは自分の興味関心について整理し、明確化されていました。特にこれから就活する人にとっては参考になったのではないかと思います。

 

次にリビタという会社についてです。

株式会社リビタはリノベーション専門のディベロッパーです。

 

賃貸マンションを高付加価値化したり、社宅を賃貸マンションや分譲住宅にしたり、企業の独身寮をシェアハウスにしたり、時には戸建て住宅のリノベーションと非常に幅広い範囲でリノベーション事業を行なっているとのことでした。

建物に手を加えて新しい価値を創り出す会社なのですね。

 

その次に浅川さん個人が携わったプロジェクトについてです。

浅川さんはこれまで、シェアハウスの企画運営、UR団地のシェアハウス化、オフィスビルのコンバージョンなど様々な事業に関わってきました。

その中でも面白いと思って取り組んでいるプロジェクトが「マチノマノマ」だそうです。

これはショッピングセンター「マチノマ大森」の中にあるコミュニケーションスペースで、買い物以外の目的でもフラっといきたくなるような場というコンセプトから作られました。

ここでは、月10本くらいのイベントが行われています。例えば、料理教室や手芸の会、和菓子遊びなどが行われているそうです。こうした人々が集まるきっかけを与えることで参加者同士をつなげることができるそうです。

しかし、こうしたイベントの運営は収益が望まれません。そこでなぜ会社として行なっているのか、その意義について説明していただきました。

現在、ECの発達やものを所有しなくなってきている時代のため、人がお店に来ること自体のハードルが上がっています。したがってリアルな場所、リアルな店舗の場所の役割を見直す必要があります。そうした社会背景を踏まえて空間のあり方を少し変えることで、自然に人が利用する場を作りたいということでした。

最後に「建物に求められる与件は変化する」というキーワードを伝えていただきました。

建築・都市に関わる上で、「今」だけでなく「これから」どうなるのべきなのかを社会背景を踏まえながら仕事されている浅川さんのレクチャーは非常に刺激になりました!

 

 

二人目のゲストは、建築学科OBである、株式会社飛騨の森でクマは踊る代表取締役代表兼CEOの岩岡孝太郎さんです。では見ていきましょう!

最初に略歴についてです。

岩岡さんも元々建築に行くつもりはなく、家具が作りたかったそうなのですが、入学前相談会で栗生先生に「家具を作るならまず建築を学びなさい」という言葉を受け、建築学科を志望したそうです。

卒業設計で設計が楽しくなり、卒業後も設計事務所で働き、建築設計の実務を学びます。

その中で、建築に+αできるような学問、スキルを身に付けたいという思いから慶應大学SFCに。

卒業後ロフトワークに入社、翌年に多様なクリエイターとクリエイティブなもの・ことのファン(非クリエイター)をつなぐコミュニティであるFabCafeを設立。

その翌年にはFabCafeを台北やバルセロナにも展開し、現在では10店舗にもなるそう。

そして2015年に森と建築家をつなぎ木をクリエイティブに流通させる仕組みを提供する株式会社飛騨の森でクマは踊るを設立されたそうです。

非常に多岐に渡る活動をされていて驚きました!岩岡さんのアクティブさは是非見習いたいです!

「今日のスライドでは一切事例とか写真とかなくて言葉攻めで行こうと思います!」との宣言から「建築」と「建築的」ということについて時系列に沿ってレクチャーしていただきました。

入学ガイダンスで「君たちは建築の仕事につけません」と服部先生から言われ、衝撃を受けた岩岡さん。世の中に建築士はあふれていて、需要ないということでしたが、その後の「設計だけの建築ではなく、いろんな建築の中の技術を統合するという考え方で職につきなさい」という言葉が現在のヒントになったそうです。

学生時代、設計が楽しく栗生研究室に。ある日のゼミで栗生先生から「食べているときも建築、寝ているときも建築、電車に乗っているときも建築を考えなさい」と言われたそうです。これを「建築として考えなさい」と解釈し、物事を建築的に考えるきっかけとなりました。

設計事務所時代、とあるイベントである問題を建築でどう解決するかを議論している際、田中浩也さんの「それは建築で解決すべき問題でしょうか?」という問いかけが登壇者の一人であった田中浩也先生からあり、ハッと気づかされたそうです。もしかしたら建築だけで解決できることには限界があるかもしれないと。

確かに私たち学生も設計課題などで、建築の力を過信してしまっている側面があります。もっと広い視野から考えるべきだということを気づかされました。

そして、その出来事ががきっかけで慶應大学SFCに入学します。

慶應大学SFC時代によく参照していたのがMITのMedia Labの研究でした。下の画像がMedia Labの生態系を表したコンパスで、領域横断的な研究テーマはだいたいみんなこの中に当てはまっています。「建築的とはこのコンパスをぐるぐる回るもの」だそうです。

当日のホワイトボードより

 

もう一つが伊藤穰一さんによる「9つの原則」です。その中でも特に印象に残ったのが「地図よりコンパス」「モノよりシステム」です。

「地図よりコンパス」というのは、いち早く柔軟に自分のゴールに向かって最適なプロセスを描けるような自分なりの指針を持つこと

「モノよりシステム」というのは一個の建築というアウトプットを作ることだけに集中せずに、それがどういう仕組みの中で作られるべきか、仕組み自体を作る思考を持つべきだということ。

こうした思考がFabCafeやヒダクマにつながっているようです。

そして岩岡さんからも最後に学生へのメッセージをいただきました。

「君たちは建築の仕事も建築的な仕事にも就けますよ」

将来が不安な学生たちにとっては背中を押されたことでしょう。岩岡さんの「建築的」という言葉をしっかり噛みしめてこれから建築・都市に向き合おうと思いました。

 

今回のARCHIBAUは、質疑も多く、コミュニティとは一体何なのか、講師と会場が一体となって考えるきっかけになったのではないでしょうか。

今回お招きしたお二方は共に建築学科出身であるにも関わらず、今は、直接建築設計に携わるのではなく、建築周辺のソフトなこと、すなわち企画運営・コミュニティの創出・システムの構築などをメインに活躍されていました。こういった考え方・働き方・選択肢があるんだなととても新鮮で濃密な時間でした!

 

最後は講師のお二方と参加者で記念写真です!

 

最後までお読みいただきありがとうございました!

今回のレクチャーレポートは都市環境システム学科4年の林が務めさせていただきました。

皆さん、ぜひ次回のレクチャーにもお越しください!