講演会♯05 レクチャーレポート

2017年11月18日(土)、5回目となるアーキバウのレクチャーが開催されました。

今回はレクチャーのレポートをお届けします!

5回目のゲストは、建築学科の宇野研究室OBである鄭 仁愉(テイ ジンユ)さんにお越しいただきました!

今回もアーキバウOBOG運営unitで都市環OBの岡本さんによる前談からレクチャーがスタートです。

お馴染みとなった図で、建築や都市に関わるプレイヤーの関係性をおさらいです。

この図、とても分かりやすいですよね!

そして、鄭さんにバトンタッチ。

まずは、リノベーションに関わった、千葉県にある市原湖畔美術館のお話からです。

市原湖畔美術館(旧市原市水と彫刻の丘)は房総半島中央に位置する、高滝湖畔に観光と文化の拠点として、1995年11月にオープンしました。しかしながら、1997年の3万2000人をピークに入館者数は減り、改修直前はピーク時の半分である1万6000人まで落ち込んでいました。そのような状況の中、市原市は2013年に圏央道が開通し、付近に新設のインターチェンジができることを受け、改修を決定、改修に向けてのプロポーザルが行われました。

時代が経ち、少し古めだった建物が…

鄭さんによって、モダンなミュージアムへと変貌しました!(市原湖畔美術館HPより

 

デザインを提案するにあたっては、元の建物の癖が強すぎて、随分頭を悩ませたそうです…。

初めは建物のことは置いておいて、前面に広がる敷地に増築したり、ランドスケープ的な提案を行おうとずっと考えていたそうです。

けれども、しっくり来なかった…

とにかく、この建物を一回受け入れよう

鄭さんは一度、既存の建物から目を背けることをやめ、どこを好きになれば良いのか考えたそうです。

その結果、独特な回遊動線があることに気がついたそうです。

建物の仕上げを全て剥がし、面白い動線になる骨格だけを残して。

元の躯体は手を入れていない点が驚きでした。

アートウォールと呼ばれるスチール折板の壁を躯体を縫うように挿入。

そして、要求されている、展示室やホールを造っていったそうです。

また、既存の特徴的な梁や柱を活かした、リノベーションならではの空間も造ったそうです。

(アーティストによってはうまく利用したり、悩んだりするんだとか)

元々はお金を払ってからではないと入れなかった芝生広場はエントランスを動線を変更して、美術館に入らない人でも利用できるように。

そして、地域の人にも開かれた美術館に生まれ変わりました。

また、ワークショップスペースを中と外、共に開けるようにし、広場から美術館までがシームレスにつながる面白い体験が実現しました。

最終的にはカフェ棟などの4つの棟を増築したそうです。

(併設されているBOSSOというイタリアンレストランのピザが絶品のようですよ!)

外観のプラン等も全て変わっているのですが、元の躯体がまったく変わっていないというのが、やはり驚きでした…。

鄭さんが創り出す空間に学生は興味津々でした。

自分はまだ、湖畔美術館に行ったことがないので、是非とも行って見たくなりました!

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続いては今年の夏に完成したばかりの美波町医療保健センターについてのお話。

徳島県の南部に位置する美波町は人口7000人ほどの小さな町ですが、高齢化率が45%を超えているそうです。

敷地は太平洋に近い、高校の跡地。

巨大地震発生時には2〜3mの浸水被害が想定されているという場所です。

津波に対しては、日常性・経済性を考慮してまずは4mまで床の底上げを。

また、東日本大震災の教訓を受け、津波を受け流す構造形式を取り入れたそうです。

水が逃げて行くということは、風も通り抜けるし、人だって自由に通り抜けられる。

地域に開かれた形を提示できたと鄭さんは述べました。

防災のための構造が街に開かれた構造になる。

win-winな関係性に感心させられてしまいました。

縁もゆかりもない街で、どのような街か全くわからない。

地域の拠点となるにしてもどんな人が住んでいるのか知らない。

だから、街に拠点を構えて生活しながら設計した。

設計者に決まって、鄭さんはまず、家探しを行なったそうです。

そして完成に至るまで3年半もの間、東京と行き来する生活を続けたそうです。

一見するとル・コルビュジエのサヴォア邸みたいな近代建築風になってしまったけど、津波に対して、対抗していこうと思った結果。

街の規模に対してはかなり大きなボリュームだからなるべくピロティで建物を軽快にして、グラウンドレベルでは繋がりを感じられるようなデザインにした。鄭さんが語ります。

市原市はだいぶ癖の強い持て余されていたような建築、ここ美波町も津波が来るような建築。

難しいけど、少し見方をポジティブに変えると公園と一体となったピロティが作れたり、回遊性がある美術館が作れたり。

これからもポジティブに変換して建築を作っていけたらなぁと。

鄭さんの建築に対する想いでレクチャーは終了。

 

鄭さんの設計の考え方を追体験することができた1時間でした!

 

最後は鄭さんを交えての記念撮影。貴重なお話をありがとうございました!!

 

今回のレクチャーレポートも都市環境システム学科4年の川那辺が務めさせていただきました。

私ごとですが、これから卒業設計に挑むので、鄭さんの設計のプロセスをお伺いできてよかったと思います!

 

次回のレクチャーシリーズもお楽しみにして下さい!