講演会♯04 レクチャーレポート

2017年5月27日(土)、4回目となるアーキバウのレクチャーが開催されました。

 

今回の会場はカラフルな椅子が特徴の13号棟にあるアクティブラーニングルームでした。

 

普段は建築学科の授業で使われているそうなので、都市環の自分は初潜入の教室でした!

大きなホワイトボードに薄型モニター、千葉大にもこんな新しい教室があったのですね…(笑)

 

アーキバウOBOG運営unitで都市環OBの岡本さんからの前談から今回のレクチャーがスタート!

 

土地を買ってきて、そこで開発して、建設して、売って。

岡本さんの仕事でもあるディベロッパーというのはどのような仕事なのかというのをまずは簡単に説明していただきました。

 

今回のゲストはNTT都市開発、プロジェクト推進部次長の今中啓太さんです!

 

今中さんは横浜国立大学を学部で卒業後、NTTに入社し、電話局の窓口(今はなき…)や社宅の改装といった設計事務所に近い仕事を20年近く行われていました。

現在は、どこの土地を買って、その土地のコンセプト・リーシング(どのようなテナントやお客さんが入るか)を整理し、建築のボリュームを考えるという企画やプロジェクトマネージメントを行われているそうです。

 

長年建築に携わってきた今中さん。

ディベロッパーへの転籍を命じられた際は、「なんで今更不動産屋に…」と少し、ためらいを感じたそうなのですが、新しいコトを企画し、モノゴトをデザインする現在の仕事を非常に面白いと感じているとのこと。

 

街に建物を持ち続け、街に対して責任がある不動産会社。

今中さんは「“街にどう向き合えるか”を考えながら仕事を行なっている」と述べます。

その代表的な事例がアーバンネット神田ビル。

 

アーバンネット神田ビル(NTT都市開発HPより)

いかに大きく広く造るかが鉄則の不動産会社において、敷地いっぱいに建物を建てるのが普通です。

しかし、空地を確保しながら容積を向上させる総合設計制度を活用することで、このビルは細く長い形のデザインに決定されました。

神田は大手町や秋葉原といった高層建築が立ち並ぶエリアに挟まれた場所ですが、高層建築がありませんでした。

敷地は駅近ということもあり、高い方がシンボリックになるのでは?と考えられたそうです。

また、神田には緑や広場がありません。

そこで、消火栓を備えた防災拠点となる空地も設けたそうです。(これにより、総合設計制度を利用して高層建築が可能となります)

 

一方で神田に多い老舗料理店のすだれをイメージして細かめのルーバーを利用したり、煉瓦造りの鉄道高架橋に合わせたレンガ調のタイルを利用したりと神田の魅力を取り入れたデザインになっています。

神田にあるものを活かしつつ、神田にないものを創る。

アーバンネット神田ビルは、今中さんの街への想いが詰まったビルなのでした。

 

新しく建てることもあれば、古いものをリニューアルすることもあります。

次にお話いただいたのは、今中さんがトイレ・喫煙所のリニューアルに携わられたアーバンネット大手町ビルについてです。

アーバンネット大手町ビル(NTT都市開発HPより)

ビルは生きている。

今中さんは始めにそう語ります。

空調・水系は20年、電気系は30年で更新を行わないといけないそうで、このビルもその更新時期を向かえていました。

時の流れにより人々の利用の仕方も変わります。

特にトイレは近年、スマホの利用により使用時間が長くなっているそうです。また、男性も身だしなみを整えたり、歯磨きをするようになったそうです。

付加価値をつけるためには、社会的なトレンドを意識して、機能を更新することが重要になってくる。

リニューアル工事ならではの難点もお話にありました。

それは既存のテナントを稼働させたまま、工事を行うこと。

工事の順序を工夫してうまくリニューアルしているそうですが、自分が設計する側だったらかなり頭を悩まされそうです…

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自社オフィスをリニューアルされたお話もありました。

 

固定席を減らし、様々な人が自由に利用できるスペースを増やし、働き方の改革を提案されたそうです。

自分も働くなら、こんなオフィスがいいですね…。良いアイデアが自然と生まれそうです!

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NTT都市開発では国内のみならず、海外でも事業を行われているそうで、海外のプロジェクトのお話もありました。

ロンドンの中心部で行われたビルのリニューアルプロジェクト。

 

One King William Street(NTT都市開発HPより)

日影規制や斜線規制といった規制が多い日本とは違い、このような規制が無いそうです。

では、何が建物の形等を決めているのか?

それは、行政区のトップだそうで、トップがOKと言えば良いそうです。驚きですね…。

NTT都市開発では英国の他に、米国やオセアニア、アジアでも事業展開を行なっているそうです。本当にグローバルですね。

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最後にお話いただいたのは市ヶ谷にあるオフィスビルをコンバージョンした「HIVE TOKYO」についてです。

 

HIVE TOKYO(HIVETOKYO公式HPより)

このビルは50%も空いているという状況だったのですが、10階建の9階からは靖国神社が望めるテラスがありました。

また、ビルからは桜も見え、外国人に受けるのでは?と思われ、ターゲットに設定し、シェアオフィスやミーティングルーム、マンスリーアパートメントを入れました。

資産を有効活用し、新しい方向性を探った物件となったそうです。

 

海外と違い、土地に対する欲求が強い日本人。

それ故、これからも不動産事業はなくなることが無いと今中さんは最後に語ります。

しかし、競争に打ち勝つためには上例のような新しい取り組みが必要だと、強いメッセージをいただき、今中さんのお話は終了しました。

スライドは100枚以上、およそ1時間半にも及ぶ非常に濃いレクチャーでした!

 

その後は質問タイム。将来、ディベロッパーを志望する学生も多く、多くの質問が飛び交いました。

 

最後に今中さんを交えての記念撮影を行いましたよ。

 

今回も30人近い方が参加していただけました!(数名、本人の希望で写真に写っていない方がいます…)

今中さん、貴重なお話をありがとうございました!

 

次回のレクチャーは秋頃に開催予定です!

ぜひ皆さまご参加ください!!

 

今回のレクチャーレポートは都市環境システム学科4年の川那辺が務めさせていただきました。

この春より、運営メンバーに携わらせていただいております。皆さまどうぞよろしくお願いいたします!